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「かぼちゃは栄養たっぷりでヘルシーだから、腎臓病のうちの子にも良いはず」
そう思って調べに来た方に、最初に正直にお伝えします。
腎臓病の犬には、かぼちゃは控えることをおすすめします。
βカロテンや食物繊維が豊富で、健康な犬には確かに良い食材です。
しかし腎臓病では、その「ヘルシーなイメージ」が落とし穴になります。
この記事では、現役獣医師のDr.サクが、かぼちゃが腎臓病の犬に向かない理由を数値で示し、「代わりに何をあげられるか」「手作りおやつはどうすればいいか」までセットで解説します。
この記事の著者・監修者:Dr.サク(臨床10年以上)
現役の獣医師、都内動物病院に勤務。腎臓病を中心に、食事療法で数多くの犬の健康寿命を延ばしてきた実績を持つ。専門的な医学的知見に基づき、愛犬に本当に必要なフードを厳選しています。
かぼちゃが腎臓病の犬に向かない3つの理由
①カリウム430mg/100g──弱った腎臓が処理しきれない
カリウム自体は生命維持に必須のミネラルで、健康な犬なら余剰分は腎臓から尿へ排泄されます。ところが腎臓病が進行すると、この排泄能力が低下します。血中カリウム濃度が上がりすぎる「高カリウム血症」は、不整脈や心停止につながる危険な状態です。
西洋かぼちゃ(生)のカリウムは430mg/100g。参考までに、低カリウム野菜の代表であるもやしは79mg、きゅうりは200mgです。かぼちゃはその2〜5倍。腎臓病の犬のおやつとして選ぶ理由がない数値です。
②焼くと570mgに濃縮──「焼きかぼちゃ」は逆効果
ここが本記事でいちばんお伝えしたい事実です。
かぼちゃは焼くとカリウムが430mg→570mgに増えます(約33%増)。
| 状態 | カリウム | リン | 食品番号 |
|---|---|---|---|
| 西洋かぼちゃ 生 | 430mg | 48mg | 06048 |
| 西洋かぼちゃ ゆで | 340mg(21%減) | 37mg | 06049 |
| 西洋かぼちゃ 焼き | 570mg(33%増) | 55mg | 06332 |
※すべて100gあたり、八訂より
カリウムが「増える」のではなく、焼くことで水分が蒸発し、同じ100gあたりの濃度が濃縮されるのが理由です。香ばしくて甘い焼きかぼちゃを好む子は多いのですが、腎臓病の犬にとっては生のまま以上に危険な与え方になります。「加熱すれば安心」という思い込みがいちばん危ない例です。
③種はカリウム840mg+リン1100mg──絶対に与えない
かぼちゃの種(いり・味付け、食品番号05006)はカリウム840mg、リン1100mg/100g。
リン1100mgという数値に注目してください。リンは腎臓病で最も制限すべきミネラルで、過剰摂取は腎臓病の進行そのものを早めます。療法食が徹底してリンを制限しているのはこのためです。
市販の犬用おやつには「かぼちゃの種入り」をうたう製品が存在します。健康な犬でも消化に悪く与え方に注意が必要な食材ですが、腎臓病の犬には論外です。種・種入り製品は完全に避けてください。
茹でれば大丈夫?──ゆでこぼしの限界
「カリウムは水に溶けるから、茹でれば減るのでは?」──半分正解です。
かぼちゃはゆでると430mg→340mg(約21%減)になります。カリウムが煮汁に溶け出すためで、茹でこぼし(煮汁を捨てる)には一定の効果があります。
ここで、さつまいもと比較してみましょう。
| 食材 | 生/蒸し前 | 加熱後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| さつまいも(蒸し) | 480mg | 480mg | 変化なし |
| かぼちゃ(ゆで) | 430mg | 340mg | 21%減 |
| かぼちゃ(焼き) | 430mg | 570mg | 33%増 |
さつまいもは蒸してもカリウムがまったく減らないのに対し、かぼちゃは茹でこぼしが「少し」効きます。ただし誤解しないでください。340mgはまだ中〜高カリウムの水準で、もやし(79mg)の4倍以上あります。「さつまいもよりはマシ。それでも控えるのが基本」が正確なニュアンスです。
健康な犬にとってのかぼちゃは優秀な食材
誤解のないように強調しておくと、腎臓に問題のない健康な犬にとって、かぼちゃは数ある野菜の中でも優秀なおやつ・トッピング食材です。
- βカロテン:体内でビタミンAに変換され、免疫機能や皮膚・粘膜の健康を支えます。緑黄色野菜の代表格です
- 食物繊維(ゆで4.1g/100g):腸内環境を整え、便通をサポートします
- ビタミンC・E:抗酸化作用が期待できます
健康な犬への量の目安(加熱・味付けなし、皮と種を除く)
| 体重 | 1日の目安量 |
|---|---|
| 〜5kg | 10〜20g(ひと口大1〜2個) |
| 5〜10kg | 20〜40g |
| 10〜25kg | 40〜80g |
| 25kg〜 | 80〜120g |
※おやつ全体で1日の摂取カロリーの10%以内が原則です
つまり「かぼちゃ=ダメな食材」なのではなく、腎臓病という状態が、かぼちゃのカリウムを問題に変えるという関係です。
かぼちゃプリンは腎臓病の犬にあげていい?
「犬用かぼちゃプリン」のレシピや市販品を見かけて、腎臓病の子にも…と考えた方へ。かぼちゃプリンは二重の意味でNGです。
- かぼちゃペースト=カリウムの濃縮:プリンはかぼちゃを裏ごし・加熱して水分を飛ばすため、焼きかぼちゃと同じ理屈でカリウム濃度が上がります
- 牛乳・卵=リンの上乗せ:プリンの材料である牛乳と卵はどちらもリン源。腎臓病で最も避けたいリンを、わざわざ追加することになります
カリウム濃縮とリン追加のダブルパンチで、単品のかぼちゃより条件が悪化します。同じ理由で、かぼちゃの煮物やポタージュも要注意です。煮汁ごと食べる料理は、せっかく溶け出したカリウムを丸ごと摂ることになり、茹でこぼしの効果がゼロになります。
かぼちゃの代わりにあげられるおやつ
「じゃあ何をあげればいいの?」に答えます。カリウムの低い野菜なら、少量のおやつとして選択肢になります。
| 食材 | カリウム(mg/100g) | メモ |
|---|---|---|
| もやし | 79 | 最有力。加熱して |
| きゅうり | 200 | 水分補給を兼ねる |
| キャベツ | 190 | 加熱で少量 |
※いずれも与える前に主治医へ確認を。腎臓病のステージや血液検査の数値によって可否は変わります
βカロテンなどかぼちゃのメリットが惜しい場合も、療法食には必要な栄養素がバランス設計されています。おやつで栄養を補う発想より、療法食を軸に据えて、おやつは「低リスクで少量」が腎臓病管理の基本です。
よくある質問
Q. ひとかけらなら大丈夫?
少量なら直ちに危険というわけではありませんが、「ひとかけらだけ」が習慣化するのが問題です。カリウムは蓄積的に血中濃度へ影響します。誤食してしまった場合は量を記録し、嘔吐・元気消失・ふらつきがあればすぐ受診してください。
Q. かぼちゃの皮やわたは?
皮は実より硬く消化に悪いうえ、わた周辺は栄養が濃い部位です。健康な犬でも皮・わたは取り除くのが無難で、腎臓病の犬ではそもそも実を含めて控える前提なので、議論の余地はありません。
Q. 日本かぼちゃと西洋かぼちゃで違う?
ほぼ同じです。日本かぼちゃ(生)はカリウム420mg、西洋かぼちゃは430mg(八訂)。品種を変えても解決にはなりません。
Q. 腎臓病のステージが軽ければ与えていい?
初期ステージで血中カリウム値が正常なら、主治医が少量を許可するケースはあります。ただしそれは血液検査の数値を見たうえでの個別判断です。自己判断で「軽いから大丈夫」とは考えず、必ず検査値とセットで相談してください。
まとめ──βカロテンは他の食材で補える
- 腎臓病の犬にかぼちゃは控えるのが基本(カリウム430mg/100g)
- 焼くと570mgに濃縮。焼きかぼちゃは生より危険
- ゆでで340mgに減るが、安心ラインではない
- 種はK840+P1100で論外。種入りおやつに注意
- かぼちゃプリンはカリウム濃縮+リン追加の二重NG
- βカロテンの健康効果は事実。ただし腎臓が弱った状態では裏目に出る
かぼちゃの魅力であるβカロテンは、療法食や主治医が許可した他の食材からも摂取できます。「体にいい食材」と「いまのこの子に合う食材」は別物──それが腎臓病の食事管理の出発点です。迷ったら、自己判断ではなく主治医に。それがいちばんの近道です。
出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」食品番号 06048 / 06049 / 06332 / 06046 / 06047 / 05006


