「夜中に愛犬が背中を丸めて震えている。触ろうとすると痛がって鳴く」——そんな光景を目にしたら、それは膵炎の激痛かもしれません。
こんにちは、臨床経験10年以上の獣医師・Dr.サクです。
膵炎は、一度発症すると繰り返しやすい病気です。診察室で何度も「また膵炎になってしまいました」と涙ぐむ飼い主さんを見てきました。あの激痛を愛犬に二度と味わわせたくない——その気持ち、本当によく分かります。
でも、安心してください。膵炎は「正しい食事管理」でコントロールできる病気です。特に重要なのが「脂質制限」。これさえ理解して実践すれば、再発リスクは劇的に下がります。
この記事では、獣医師として10年以上の臨床現場で培った知識をもとに、
- 膵炎になぜ「脂質制限」が必要なのか
- 具体的に脂肪分は何%以下にすべきか
- 食べてはいけないもの・食べていいもの
- 獣医師が推奨する療法食の選び方
まで、すべてお伝えします。愛犬の「その後の一生」を守るために、ぜひ最後までお読みください。
この記事の著者・監修者:Dr.サク(臨床10年以上)
現役の獣医師、都内動物病院に勤務。腎臓病を中心に、食事療法で数多くの犬の健康寿命を延ばしてきた実績を持つ。専門的な医学的知見に基づき、愛犬に本当に必要なフードを厳選しています。
犬の膵炎とは?なぜ「脂質」が最大の敵なのか
膵臓が自分自身を消化してしまう恐怖のメカニズム
膵臓は、食べ物を消化するための「消化酵素」を作る臓器です。本来、これらの酵素は腸に送られて初めて活性化し、食べ物を分解します。
ところが膵炎になると、膵臓の中で酵素が暴走し、膵臓自身を消化し始めてしまうのです。これを「自己消化」と呼びます。
想像してみてください。自分の体が自分を溶かし始める——これがどれほどの激痛か。犬は痛みを我慢する動物ですが、膵炎の痛みは我慢できないほど強烈です。だから背中を丸め、震え、触られるのを嫌がるのです。
「脂肪分」がスイッチを押してしまう理由
では、なぜ膵炎が起こるのか?
最大の原因が「高脂肪食」です。
脂肪分の多い食事を摂ると、膵臓は大量の消化酵素を出さなければなりません。この「過剰な負担」が膵臓を刺激し、酵素の暴走を引き起こすのです。
獣医師として診察していると、膵炎で運ばれてくる犬の多くが、その直前に以下のようなものを食べています:
- 焼肉の脂身
- 揚げ物のおすそ分け
- クリスマスのケーキ
- 高脂肪のジャーキー
「少しくらい大丈夫だろう」——その一口が、命に関わる膵炎のスイッチを押してしまうのです。
急性膵炎と慢性膵炎の違い
膵炎には「急性」と「慢性」があります。
急性膵炎は、突然発症し激しい症状が出ますが、適切な治療で回復することもあります。ただし、一度膵炎になった犬は、再発しやすい体質になります。
これが繰り返されると、膵臓が硬く線維化し「慢性膵炎」に移行します。慢性化すると、膵臓の機能が徐々に失われ、消化酵素不足(膵外分泌不全)や糖尿病を併発することもあります。
だからこそ、最初の膵炎の後の食事管理が、その後の一生を左右するのです。
獣医師が定める「低脂肪」の基準値【保存版】
「低脂肪のフードを選んでください」——獣医師からそう言われても、具体的に何を基準にすればいいか分からず困っていませんか?
ここでは、プロとして使っている明確な数値基準をお伝えします。
療法食の目安:乾物重量で脂肪分10%以下が理想
膵炎ケアの療法食として推奨されるのは、乾物重量(Dry Matter Basis)で脂肪分10%以下、理想は5-8%です。
「乾物重量って何?」と思われるかもしれません。
ドッグフードの袋に書いてある「粗脂肪○%」は、水分を含んだ状態での数値です。でも、フードによって水分量が全然違います(ドライフードは10%程度、ウェットフードは75%以上)。
だから、水分を除いた「乾物」での脂肪分で比較しなければ、正確な判断ができないのです。
乾物重量の計算方法
計算式は以下の通り:
乾物重量での脂肪% = (表示の粗脂肪% ÷ (100 – 水分%)) × 100
例えば、
- 粗脂肪8%、水分10%のドライフード
→ 8 ÷ (100-10) × 100 = 8.9% - 粗脂肪3%、水分75%のウェットフード
→ 3 ÷ (100-75) × 100 = 12%
一見ウェットフードの方が低脂肪に見えますが、乾物換算すると実は高脂肪だったりするのです。
市販の「低脂肪」表示に注意
スーパーで売られている「低脂肪」と書かれたフードでも、乾物換算すると15-20%あることも珍しくありません。
膵炎の犬には、必ず「膵炎・消化器ケア用」と明記された療法食を選んでください。これらは獣医師の監修のもと、本当に脂質が制限されています。
食べてはいけないもの・注意すべき食材リスト
膵炎の犬にとって、「何を食べさせないか」は命を守る重要な知識です。
【絶対NG】これだけは絶対に与えないで
以下の食材は、膵炎を再発させる高リスク食品です:
❌ 揚げ物すべて
- 唐揚げ、天ぷら、フライドポテト等
- 油で調理したものはすべてNG
❌ 脂身の多い肉
- 豚バラ肉、鶏皮、牛カルビ
- ベーコン、ソーセージ
❌ 乳製品(高脂肪)
- チーズ、生クリーム、バター
- アイスクリーム
❌ ナッツ類
- くるみ、アーモンド、ピーナッツ
- 脂質が非常に高い
❌ 市販のおやつ・ジャーキー
- ほとんどが高脂肪
- 特に牛皮ガムや豚耳は危険
❌ 人間の食べ物全般
- 味付けされた料理はすべて避ける
「少しだけなら…」という気持ちは分かります。でも、その「少し」が再発のトリガーになります。愛犬の命を守るために、心を鬼にしてください。
【条件付きOK】トッピングに使える食材
完全な療法食だけでは食欲が落ちる子もいます。そんな時、以下の食材なら少量トッピング可能です:
✓ 鶏ささみ(皮なし・茹で)
- 最も低脂肪な肉。必ず茹でて、茹で汁は捨てる
- ささみ自体も脂肪分がゼロではないので、少量に
✓ 白身魚(タラ、鯛)
- 脂肪分が少なく消化も良い
- 刺身ではなく、加熱して
✓ じゃがいも・さつまいも(少量)
- 炭水化物源として。バターや油は使わない
✓ 白米・おかゆ
- 消化が良く、エネルギー源になる
✓ かぼちゃ・にんじん(茹で)
- 食物繊維とビタミン補給に
重要な注意点:
これらの食材も、あくまで「療法食への少量トッピング」として。メインにはしないでください。全体の10-15%程度までが目安です。
【獣医師厳選】膵炎・消化器ケア用療法食の選び方 3選
ここからは、実際に臨床現場で推奨している療法食をご紹介します。それぞれの特徴と、どんな子に向いているかを解説します。
①ロイヤルカナン 消化器サポート(低脂肪)
【特徴】
- 乾物重量で脂肪分約7%と、最も厳格な脂質制限
- 急性膵炎の直後、最初に選ぶべき療法食
- 動物病院で最も処方される安心感
【こんな子におすすめ】
- 急性膵炎で入院したばかり
- 重症度が高く、徹底的な脂質制限が必要
- まずは「鉄板」の療法食で安定させたい
【注意点】
- 嗜好性(味)が合わない子もいる
- 長期給与の場合、栄養バランスに注意
獣医師として、急性期は迷わずこれを処方します。まずは炎症を鎮めることが最優先だからです。
②ヒルズ i/d ローファット
【特徴】
- 脂肪分約8.5%(乾物重量)と低脂肪
- チキン味で食いつきが良い子が多い
- 消化器疾患全般に対応した定番療法食
【こんな子におすすめ】
- ロイヤルカナンの食いつきが悪かった
- 膵炎だけでなく、下痢・嘔吐もある
- 長期的に継続しやすいフードを探している
【注意点】
- ロイヤルカナンよりやや脂質が高め(それでも低脂肪)
味の好みは犬それぞれ。ロイヤルカナンで食欲が落ちた場合、ヒルズに変えると食べてくれることも多いです。
③和漢みらいのドッグフード(膵臓・肝臓用)【慢性・再発予防の切り札】
ここからは、私が「再発を繰り返す慢性膵炎」の子に特におすすめしている選択肢です。
【特徴】
- 低脂質(脂肪分約8%)でありながら、漢方・マクロビの考え方を取り入れた特別療法食
- 主原料は鹿肉(低アレルゲン・高消化)
- 89種類の和漢植物エキス配合で、「炎症体質そのもの」にアプローチ
【なぜ慢性膵炎に和漢みらいなのか?】
通常の療法食は「脂質を制限する」ことに特化しています。これは急性期には正解です。
でも、慢性的に膵炎を繰り返す子の場合、体質そのものが「炎症を起こしやすい状態」になっています。ストレス、免疫の乱れ、消化機能の低下——こうした根本的な問題が、膵炎を繰り返す真の原因です。
和漢みらいは、西洋医学的な「脂質制限」と、東洋医学的な「体質改善」を融合させた、まさに「攻めのケア」です。
配合されている和漢植物の働き:
- 田七人参・霊芝:炎症を鎮め、免疫バランスを整える
- ウコン・キバナオウギ:肝臓・膵臓の機能をサポート
- 乳酸菌・オリゴ糖:腸内環境を整え、消化吸収を助ける
【こんな子におすすめ】
- 何度も膵炎を繰り返している
- 通常の療法食を食べているのに再発する
- ステロイドや薬に頼りたくない
- 「体質から変えていきたい」と考えている飼い主さん
【実際の飼い主さんの声】
「3回目の膵炎で、もう諦めかけていました。獣医さんに相談したところ、『体質改善も考えてみては』と和漢みらいを勧められて。半年間続けたら、あれだけ頻繁だった嘔吐がピタリと止まり、1年以上再発していません」(トイプードル・8歳)
【注意点】
- 価格は通常の療法食よりやや高め
- 漢方の香りが苦手な子もいる(ただし鹿肉ベースで嗜好性は高い)
- 急性期の炎症が落ち着いてから切り替えるのがベスト
療法食を選ぶ際の優先順位
獣医師としての推奨フローチャートは以下です:
1. 急性膵炎直後(入院~退院直後)
→ ロイヤルカナン消化器サポート(低脂肪)で徹底的に脂質制限
2. 症状が落ち着いた維持期
→ ヒルズ i/d ローファット、または継続してロイヤルカナン
3. 再発を繰り返す慢性期
→ 和漢みらい(膵臓・肝臓用)で体質改善も視野に入れる
もちろん、最初から和漢みらいを選ぶのも選択肢です。大切なのは、愛犬の状態と、飼い主さんの「どう向き合いたいか」という想いに合わせて選ぶことです。
手作り食は可能か?獣医師の見解
「療法食だけでは可哀想。手作りしてあげたい」——その気持ち、本当によく分かります。
結論から言うと、膵炎の犬への手作り食は、かなり高度な知識が必要で、おすすめできません。
理由は以下の通り:
リスク①:脂質計算が非常に難しい
肉にも魚にも、見えない「隠れ脂肪」があります。例えば鶏ささみも、完全に脂肪ゼロではありません。これを毎食、正確に計算するのは極めて困難です。
リスク②:栄養バランスの崩れ
低脂肪にこだわるあまり、タンパク質やビタミン・ミネラルが不足しがちです。長期的には別の健康問題を引き起こします。
リスク③:「これくらい大丈夫」の罠
手作りだと、ついつい「愛情」で脂肪分の多い食材を混ぜてしまいがち。その積み重ねが再発を招きます。
それでも手作りしたい場合
どうしても手作りしたい場合は、必ず獣医師の栄養指導を受けてください。さらに、定期的に血液検査で膵臓の数値(リパーゼ、cPLI)をチェックすることが必須です。
「愛情」と「正確な栄養管理」は別物です。本当に愛犬のためを思うなら、プロが設計した療法食に任せる勇気も必要です。
おやつはどうする?膵炎でも安全なご褒美
「おやつを全部禁止されたら、犬生が楽しくない…」——その気持ち、痛いほど分かります。
でも、膵炎の子にとって、市販のおやつはほぼすべてがNGです。ジャーキー類は特に高脂肪です。
安全なおやつの選択肢
✓ 療法食をおやつに
- 普段のフードを数粒、ご褒美として与える
- 「特別感」は出しにくいが、最も安全
✓ 茹でたささみ(極少量)
- 5mm角程度にカットして、ご褒美に1-2個
- 毎日は避ける
✓ 低脂肪野菜
- 茹でたにんじん、かぼちゃの小さな一口
- 犬が好む子なら有効
✓ 膵炎対応の専用おやつ
- 一部メーカーが「低脂肪おやつ」を販売
- 必ず脂肪分を確認し、獣医師に相談を
「おやつ=食べ物」から卒業する
散歩、遊び、撫でること——これらも犬にとっては「ご褒美」です。食べ物以外の喜びを増やすことで、膵炎でも豊かな犬生は送れます。
再発させないための日常管理【獣医師からの5つのアドバイス】
食事管理以外にも、再発予防のために大切なことがあります。
①体重管理(肥満は膵炎のリスク因子)
肥満は膵炎の大きなリスクです。療法食を適正量与え、定期的に体重測定を。
②ストレスを減らす
ストレスは免疫を乱し、炎症を起こしやすくします。静かな環境、規則正しい生活を心がけて。
③誤食を防ぐ
散歩中の拾い食い、ゴミ箱あさりは厳禁。徹底的に管理を。
④定期的な血液検査
症状がなくても、年に2-4回は血液検査で膵臓の数値をチェック。早期発見が再発防止につながります。
⑥家族全員で共有する
「おじいちゃんがこっそりおやつをあげていた」——こういうケース、実は多いんです。家族全員で「絶対に人の食べ物を与えない」ルールを徹底してください。
まとめ:今日の一口が、明日の再発を防ぎます
膵炎は、確かに一度なると「一生付き合う病気」になることもあります。
でも、正しい食事管理さえできれば、元気に長生きできる病気でもあるのです。
大切なのは、以下の3つ:
- 徹底的な脂質制限(乾物重量10%以下)
- 膵炎対応の療法食を選ぶ
- 家族全員で「食べさせない」を徹底する
そして、もし再発を繰り返すなら、「体質改善」という視点も取り入れてみてください。和漢みらいのような、東洋医学の知恵を活かした療法食は、「繰り返す膵炎」に悩む飼い主さんの新しい選択肢になるはずです。
「もう二度と、あの痛みを経験させたくない」——その想いが、愛犬を守ります。
今日の一口が、明日の再発を防ぎます。
獣医師として、あなたと愛犬を全力で応援しています。一緒に頑張りましょう。
何か不安なことがあれば、遠慮なくかかりつけの獣医師に相談してくださいね。
獣医師が教える「食事・ケア・再発予防」のすべて

