「おねだりする愛犬の目を見て、心が痛みませんか?」
クンクンと鳴きながら、あなたの手元を見つめる愛犬。その目は、まるで「私だけ仲間はずれ…」と訴えているよう。
こんにちは、臨床経験10年以上の獣医師・Dr.サクです。
膵炎と診断された後、「もうおやつは一生あげられないんですか?」と涙ぐむ飼い主さんを、何度も見てきました。
獣医師として、はっきりとお伝えします。
膵炎 = おやつ一生禁止、ではありません。
「選び方」と「タイミング」さえ間違えなければ、おやつをあげることはできます。
でも、逆に言えば——
「選び方を間違えれば、その一口が、愛犬を再び激痛の地獄に叩き落とす」
これも事実です。
この記事では、獣医師として、
- なぜ普通のおやつが「爆弾」なのか
- 食べていいもの・絶対ダメなもの(完全リスト)
- 市販で買える「膵炎対応」低脂肪おやつ
- 獣医師が教える「最も安全なおやつの裏技」
すべて、包み隠さずお伝えします。
「おやつは心の栄養ですが、命より重くはありません。」
安全に、長く一緒にいるために——正しい知識を、今日、手に入れてください。
この記事の著者・監修者:Dr.サク(臨床10年以上)
現役の獣医師、都内動物病院に勤務。腎臓病を中心に、食事療法で数多くの犬の健康寿命を延ばしてきた実績を持つ。専門的な医学的知見に基づき、愛犬に本当に必要なフードを厳選しています。
なぜ膵炎の犬に「普通のおやつ」が危険なのか
まず、なぜ市販のおやつがダメなのかを理解しましょう。
市販おやつに潜む「隠れ脂肪」の恐怖
「無添加」「国産」「プレミアム」——そんな言葉に安心して、市販のおやつを買っていませんか?
でも、パッケージの裏を見てください。
【例:市販の人気ジャーキー】
- 粗脂肪:15%(表示)
- 水分:20%
一見、「15%なら低脂肪?」と思いますよね。
でも、乾物重量で計算すると、約18.75%です。
膵炎の犬に必要なのは「10%以下」。これは、完全にアウトです。
さらに恐ろしいのが、
- 「牛皮ガム」→ 脂質約20-30%
- 「豚耳」→ 脂質約30-40%
- 「チーズ入りおやつ」→ 脂質約25-35%
これらは、膵炎の犬にとって「毒」です。
膵臓にとって、脂肪は「爆弾のスイッチ」
膵炎を一度経験した膵臓は、「わずかな脂肪」でも、炎症のスイッチが入りやすい状態になっています。
例えるなら、「一度火傷を負った皮膚は、その後も弱い」のと同じです。
「ちょっとだけなら…」
その「ちょっと」が、再発の引き金になります。
【重要】急性期(治療中)は、絶対にNG
もし今、愛犬が膵炎の治療中なら、おやつは絶対にNGです。
急性期は、膵臓を「完全に休ませる」ことが最優先。
- 絶食・絶水(24-48時間)
- その後、療法食のみ(数日~数週間)
この期間に、「可哀想だから」とおやつをあげると、治療が台無しになります。
診察室で、こんなケースを見たことがあります。
【症例:チワワ・8歳・メス】
- 膵炎で入院、退院後2日目
- 「元気そうだから」と、ささみ(茹で)を少量あげた
- その夜、再び嘔吐・震え
- 再入院
飼い主さんの「愛情」が、裏目に出たのです。
急性期は、心を鬼にして、療法食のみ。これが鉄則です。
【OK食材】獣医師が許可する「低脂肪・安全リスト」
「じゃあ、何ならあげていいんですか?」
ここからは、「膵炎が落ち着いた維持期」に限り、少量ならOKな食材をご紹介します。
【重要な前提】
- 急性期(治療中)はNG
- 維持期でも、全体の10%まで(ベースは療法食)
- 毎日ではなく、たまのご褒美として
①野菜・果物:食物繊維と水分が豊富
✓ キャベツ(茹で)
- 脂質ほぼゼロ
- 食物繊維が豊富で、便通を整える
- 生ではなく、必ず茹でる(消化を良くするため)
✓ りんご(皮なし・小さく切る)
- 脂質ほぼゼロ
- 水分とビタミンC補給
- 種・芯は取り除く(毒性あり)
✓ いちご(小粒1個程度)
- 脂質ほぼゼロ
- ビタミンC・抗酸化成分
- 糖分があるので、1日1個まで
✓ にんじん(茹で)
- βカロテン豊富
- 小さく切って、おやつ代わりに
✓ かぼちゃ(茹で・少量)
- 食物繊維とビタミンA
- 糖分があるので、少量に
【注意点】
- すべて「茹でる」「蒸す」こと
- 油は絶対に使わない
- 小さく切って、喉に詰まらせないように
②炭水化物:エネルギー補給
✓ 白米(炊いたもの)
- 脂質ほぼゼロ
- エネルギー源として
- 玄米はNG(脂質が多い)
✓ じゃがいも(茹で)
- 炭水化物と食物繊維
- バター・油は絶対に使わない
✓ さつまいも(茹で・少量)
- 食物繊維豊富
- 糖分があるので、少量に
③タンパク質:低脂肪のものだけ
✓ 鶏ささみ(皮なし・茹で)
- 脂質約1-2%
- 必ず皮を完全に取り除く
- 茹で汁は捨てる(脂質が溶け出している)
- 1日5-10g程度まで(5kgの犬の場合)
✓ 白身魚(タラ・茹で)
- 脂質約0.5-1%
- 刺身ではなく、必ず加熱
- 青魚(サバ・イワシ等)はNG(脂質が多い)
【重要な注意点】
「ささみなら大丈夫」と思って、毎日たっぷりあげるのは危険です。
ささみも、脂質はゼロではありません。量が多いと、脂質オーバーになります。
「少しだけ」「たまに」——これが鉄則です。
【絶対NG】再発を招く「悪魔の食べ物」リスト
ここからは、絶対に与えてはいけない食材です。
❌ 乳製品(高脂肪の代表)
✕ チーズ(すべて)
- 脂質約25-35%
- 「少しだけ」でも危険
✕ 牛乳
- 脂質約3-4%
- 下痢も引き起こす
✕ ヨーグルト
- 「体に良い」と誤解されがちだが、脂質約3-4%
- 無脂肪ヨーグルトでも、膵炎にはリスク
✕ 生クリーム・バター
- 脂質約40-80%
- 論外
❌ 肉類(脂肪分が多い)
✕ 豚肉(すべて)
- バラ、ロース、赤身すべてNG
- 脂質約10-40%
✕ 牛肉(すべて)
- 赤身でも脂質約10-20%
- 「赤身なら大丈夫」は誤解
✕ 鶏肉の皮・脂身
- 脂質約40-50%
- 絶対に与えない
✕ ベーコン・ソーセージ
- 脂質約30-50%
- 塩分も高く、最悪
❌ 人間の食べ物
✕ パン・クッキー
- バターや油が使われている
- 糖分・塩分も高い
✕ 揚げ物(すべて)
- 唐揚げ、天ぷら、フライドポテト
- 脂質が極めて高い
✕ ケーキ・アイスクリーム
- 脂質・糖分が高い
- 人工甘味料(キシリトール)は犬に毒
❌ 植物油(誤解されがち)
✕ 亜麻仁油・オリーブオイル
- 「体に良い」と誤解して、フードにかける人がいますが、膵炎にはNG
- どんなに良質な油でも、膵臓には「脂肪」でしかない
❌ ナッツ類
✕ くるみ・アーモンド・ピーナッツ
- 脂質約50-70%
- 膵炎には最悪
【市販品】「膵炎対応」低脂肪おやつ
「手作りは面倒…市販で安全なおやつはないの?」
獣医師として、以下の基準で選べば、市販品でもOKです。
選ぶ基準:乾物重量で脂質10%以下
【計算式】
乾物重量での脂質% = (表示の粗脂肪% ÷ (100 – 水分%)) × 100
例:
- 粗脂肪5%、水分10% → 5 ÷ (100-10) × 100 = 5.6% → OK
- 粗脂肪10%、水分20% → 10 ÷ (100-20) × 100 = 12.5% → NG
おすすめ商品
①無添加ささみチップス
「ママクック フリーズドライのササミ」
- 脂質約2-3%
- 無添加・無着色
- 茹でたささみをフリーズドライにしたもの
②低脂肪ビスケット
「グリニーズ プラス 体重管理用」
- 脂質約6-8%
- 歯磨き効果もある
【注意点】
- どんなに低脂肪でも、「少量」が鉄則
- 毎日あげるのではなく、たまのご褒美として
- 初めてあげる時は、少量から様子を見る
【裏技】「美味しい療法食」をおやつにするのが最強の正解
ここで、獣医師として最もおすすめしたい「ズルい方法」をお伝えします。
「療法食を数粒、おやつとしてあげる」
これが、最も安全で、最も賢い方法です。
なぜ療法食がおやつに最適なのか?
①脂質が完璧にコントロールされている
- 乾物重量5-10%以下
- 手作りや市販品より、圧倒的に安全
②栄養バランスを崩さない
- どれだけあげても、栄養が偏らない
③犬は「ご褒美」と認識する
- 普段のごはんと別のタイミングであげれば、犬は「特別なおやつ」と感じる
おすすめの「美味しい療法食」
①和漢みらいのドッグフード(膵臓・肝臓用)
【特徴】
- 脂質約5-6%で、最も安全
- 鹿肉ベースで、香りが良い
- 鹿肉ジャーキーのような自然な香りで、犬が喜ぶ
【使い方】
- 普段のごはんは別の療法食(ロイヤルカナン等)
- おやつとして、和漢みらいを数粒あげる
- または、全体を和漢みらいにして、数粒をご褒美として手渡す
②うまか(UMAKA)
【特徴】
- 脂質約9.5%で、維持期に最適
- 鰹節の香りで、食いつき抜群
- 国産鶏肉100%で、「手作りのような」香り
【使い方】
- ベースの療法食に、うまかを数粒トッピング
- または、おやつとして手渡す
「療法食をおやつに」のメリット
- 安全性:最高
- 栄養バランス:完璧
- コスト:追加費用ゼロ
- 手間:ゼロ
これ以上に賢い方法は、ありません。
実際にあった「隠れてチーズをあげて再発」した悲しい事例
ここで、私の診察室で実際にあった、悲しい症例をお話しします。
【症例:トイプードル・9歳・オス】
【経緯】
- 膵炎で入院後、ロイヤルカナンを継続
- 飼い主さん(娘さん)は、徹底的に管理していた
- しかし、同居のおじいちゃんが「可哀想だから」と、こっそりチーズをあげていた
【結果】
- 3ヶ月後、再び嘔吐・震えで来院
- 血液検査で、cPL(膵臓の炎症マーカー)が急上昇
- 再発
【おじいちゃんの言葉】
「少しだけなら大丈夫だと思った…まさか、こんなことになるなんて…」
【娘さんの言葉】
「父には悪気はないんです。でも、もう…」
涙ながらに語る娘さんと、うなだれるおじいちゃん。
「愛情」が、裏目に出たのです。
この子は、その後、家族全員で「絶対に人の食べ物を与えない」ルールを徹底し、1年以上再発していません。
家族全員で、ルールを共有すること——これが、最も大切です。
【Q&A】よくある質問に獣医師が回答
Q1. 膵炎が治ったら、おやつを解禁していいですか?
A. 「治った」ではなく、「落ち着いた」です。膵炎は一生付き合う病気。おやつは、低脂肪なものを少量、たまに——が鉄則です。
Q2. ささみなら毎日あげても大丈夫?
A. いいえ。ささみも脂質はゼロではありません。毎日大量にあげると、脂質オーバーになります。
Q3. 市販の「低脂肪」おやつなら大丈夫?
A. 必ず「乾物重量で10%以下」を確認してください。市販の「低脂肪」は、実は15-20%あることも。
Q4. ボーロは大丈夫ですか?
A. 低脂肪ボーロ(脂質3-5%)なら、少量ならOK。ただし、糖分が多いので、1日5-10粒程度まで。
Q5. おやつをあげないと、犬が可哀想では?
A. 「おやつ = 食べ物」だけではありません。散歩、遊び、撫でること——これらも「ご褒美」です。食べ物以外の喜びを増やすことで、膵炎でも豊かな犬生は送れます。
まとめ:「おやつは心の栄養、でも命より重くはありません」
愛犬におやつをあげたい——その気持ち、本当によく分かります。
でも、獣医師として、はっきりとお伝えします。
「おやつは心の栄養ですが、命より重くはありません。」
【今日から守ること】
- 急性期(治療中)は、絶対におやつNG
- 維持期でも、低脂肪なものを、少量、たまに
- 最も安全なのは「療法食をおやつに」
- 家族全員で「人の食べ物を与えない」ルールを徹底
「安全なものを、少しだけ」——これが、長く一緒にいるための秘訣です。
愛犬の笑顔を、一日でも長く見るために。
一緒に頑張りましょう。
▼ おやつにもなる「美味しい療法食」はこちら
獣医師が教える「食事・ケア・再発予防」のすべて


