愛犬のために包丁を握るあなたの愛情は、何よりも尊いものです。
キッチンに立ち、新鮮な野菜を刻み、丁寧に茹でて、冷ましてから小分けにする。「市販の療法食なんかより、私が作ったごはんの方が絶対に体に良いはず」──そう信じて、毎日時間をかけて愛犬の食事を準備する。その姿は、本当に美しいものです。
私はサク、臨床経験10年の現役獣医師です。この10年間、私は数え切れないほどの「愛情深い飼い主さん」と出会ってきました。そして、その中には「手作りごはんで愛犬を救いたい」と願う方々もたくさんいました。
しかし、ここで、獣医師として私が伝えなければならない厳しい真実があります。
腎臓病の犬のための手作りごはんは、エベレスト登山並みに難しく、一歩間違えると寿命を縮めてしまうリスクがあります。
これは、あなたの愛情や努力を否定しているのではありません。むしろ、その愛情が報われるために、「正しい知識」と「現実的な選択」を知ってほしいのです。
この10年間、私は何人もの飼い主さんが、「良かれと思って」手作りごはんを続けた結果、愛犬の腎臓の数値が急激に悪化する場面を目撃してきました。再診で血液検査の結果を見せた時、飼い主さんが「私が悪かったんですね…」と泣き崩れる姿を、何度も見てきました。
私は、あなたにそんな後悔をしてほしくありません。
この記事では、腎臓病における手作りごはんの「理想と現実」を、臨床10年の経験を込めて正直にお伝えします。そして、「愛情を注ぎながら、安全に愛犬を守る方法」を、具体的に提案します。
この記事を最後まで読んでいただければ、「手作り」という形にこだわらなくても、あなたの愛情が愛犬に100%伝わることを、心から理解していただけるはずです。
※本記事をお読みになられる前に、愛犬のステージや病気の全体像を正しく理解しておくことも大切です。
⬇️ 【獣医師監修】犬の腎臓病の初期症状・ステージ別余命・最新治療の完全ガイド]
この記事の著者・監修者:Dr.サク(臨床10年以上)
現役の獣医師、都内動物病院に勤務。腎臓病を中心に、食事療法で数多くの犬の健康寿命を延ばしてきた実績を持つ。専門的な医学的知見に基づき、愛犬に本当に必要なフードを厳選しています。
なぜ腎臓病の手作りごはんは「危険」を伴うのか──獣医師が見てきた悲しい現実
まず、なぜ腎臓病の手作りごはんがこれほど難しいのか、その理由を正確にお伝えします。
理由①:リンの計算が家庭では事実上「不可能」である
腎臓病の食事療法で最も重要なのが、「リン」の制限です。リンは腎臓を硬く(線維化)させ、病気を進行させる最大の敵だからです。
しかし、リンの含有量は、食材の個体差や調理方法によって大きく変動します。
例えば
- 同じ「鶏ささみ100g」でも、個体によってリン含有量は180~220mgと幅がある
- 茹でると水に溶け出すが、その量は一定ではない
- 茹で時間や温度によっても変わる
つまり、「この食材を何グラム使えば、リンは何ミリグラムになる」という計算が、家庭では正確にできないのです。
一方、療法食は工場で厳密に管理され、「100gあたりリン○○mg」が保証されています。この「再現性」が、家庭料理では達成不可能なのです。
理由②:カルシウム:リン比の崩れが致命的なダメージを与える
腎臓病の食事では、「リンを減らす」だけでなく、「カルシウムとリンのバランス(Ca:P比)」も重要です。理想は1.2:1~2:1と言われています。
このバランスが崩れると
- カルシウム不足:骨が脆くなる、高リン血症が悪化
- カルシウム過剰:結石のリスク、軟組織の石灰化
手作りごはんでこのバランスを維持するには、カルシウムサプリメント(炭酸カルシウムなど)を正確に添加する必要がありますが、これを正確に計算できる飼い主さんは、ほとんどいません。
理由③:「良かれと思って」が逆効果になる──診察室での悲しい症例
ここで、私が実際に担当した柴犬のハナちゃん(仮名)のお話をさせてください。
ハナちゃんは12歳で腎臓病(ステージ2)と診断されました。飼い主さんは非常に愛情深い方で、「市販の療法食は添加物が多いから嫌だ。自分で作ります」と宣言されました。
私は何度も「療法食の方が安全です」と説明しましたが、飼い主さんの決意は固く、手作りごはんをスタートされました。
使用していたのは、
- 鶏ささみ
- 白米
- キャベツ、にんじん
- 「体に良い」と思って、煮干しを少量トッピング
一見、ヘルシーで良さそうに思えます。しかし、3ヶ月後の血液検査で、クレアチニン値が1.5から3.8へ急上昇していました。
原因は、煮干しの超高リン(100gあたり1,100mg)と、タンパク質の過剰摂取でした。飼い主さんは「魚だから体に良い」と信じていましたが、それが裏目に出たのです。
飼い主さんは泣きながら「私が悪かったんですね…」と謝りました。その姿を見るのが、どれほど辛かったか。
これが、手作りごはんの「怖さ」です。愛情が、逆に愛犬を傷つけてしまうことがあるのです。
理由④:必須栄養素の欠乏リスク──ビタミン・ミネラルの微妙なバランス
犬に必要な栄養素は、40種類以上あります。タンパク質、脂質、炭水化物だけでなく、
- ビタミンA、D、E、K、B群
- カルシウム、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅
- オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸
これらを「適切な量」「適切なバランス」で与えることは、獣医栄養学の専門家でも難しいのです。
手作りごはんを長期間続けると、特定の栄養素が不足し、以下のようなトラブルが起こります。
- ビタミンD不足:骨が脆くなる
- 亜鉛不足:皮膚炎、脱毛
- オメガ3不足:炎症が悪化
「野菜とお肉を入れているから大丈夫」では、決して足りないのです。
手作り食を成功させるための「最低限の条件」──それでも挑戦したいあなたへ
ここまで読んで、それでも「手作りごはんを諦めたくない」と思う方もいるでしょう。
その気持ちは、尊重します。ただし、以下の条件を絶対に守ってください。
条件①:獣医栄養学の専門書を読み、レシピを厳密に守る
手作りごはんを作るなら、以下の書籍を必ず参考にしてください。
- 『犬と猫の栄養学』(日本獣医生命科学大学 獣医保健看護学科 編)
- 『小動物の臨床栄養学』(Hand, Thatcher, Remillard著)
これらの書籍には、腎臓病用の手作りレシピと、栄養計算の方法が詳しく書かれています。
ただし、これらは専門書であり、読むだけで数時間、実践するには相当な知識が必要です。
条件②:月に1回以上の血液検査を徹底する
手作りごはんを続ける場合、最低でも月に1回、できれば2週間に1回の血液検査が必須です。
検査項目
- クレアチニン、BUN(腎機能)
- リン、カルシウム(ミネラルバランス)
- アルブミン(タンパク質の状態)
- 電解質(ナトリウム、カリウム)
これらの数値を細かく追い、少しでも悪化の兆候があれば、すぐに手作りを中止する覚悟が必要です。
条件③:サプリメントによる微調整が必須
手作りごはんだけでは、必ず栄養素が不足します。そのため、以下のようなサプリメントを正確に計量して添加する必要があります。
- 炭酸カルシウム:Ca:P比を整える
- オメガ3脂肪酸(EPA/DHA):腎臓の炎症を抑える
- 総合ビタミン・ミネラルサプリ:不足分を補う
これらを「適当に」入れるのではなく、獣医師の指導のもと、グラム単位で計算する必要があります。
現実的な結論:ほとんどの飼い主さんには無理です
ここまで読んで、正直に思いませんでしたか?「そこまでできる自信がない…」と。
それが、正常な反応です。私自身、獣医師として知識があっても、自分の愛犬に完璧な手作りごはんを毎日作る自信はありません。
だからこそ、私は「現実的で、安全で、愛情も伝えられる方法」を、次の章でご提案します。
【推奨】獣医師が提案する「ハイブリッド食事療法」──最も安全で、最も愛犬が喜ぶ解決策
ここで、私が臨床現場で最も推奨している方法をお伝えします。それは、「90%の完璧な療法食 + 10%の愛情トッピング」です。
なぜこの方法が「最強」なのか?
この方法には、3つの大きなメリットがあります:
①栄養バランスが完璧に保たれる
ベースが療法食なので、リン・タンパク質・ミネラルのバランスは完璧です。その上に、10%程度のトッピングを加えても、全体のバランスが大きく崩れることはありません。
②飼い主さんの「作ってあげたい」気持ちが満たされる
毎日少しだけでも、自分で茹でた野菜やさつまいもをトッピングすることで、「愛情を形にしている」という満足感が得られます。
③愛犬の食欲が向上する
療法食だけでは食いつきが悪い子も、トッピングを加えることで喜んで食べるようになります。食べてくれることが、何より重要です。
具体的な「ハイブリッド食事療法」のやり方
【基本の配分】
- 療法食:90%(主食)
- トッピング:10%(愛情プラスα)
【安全なトッピング例】
- 茹でたキャベツ(小さじ1~2杯)
- 茹でたさつまいも(小さじ1杯)
- りんごのすりおろし(小さじ1杯)
- 白米のおかゆ(小さじ1~2杯)
【重要な注意点】
- トッピングの汁(茹で汁)は捨てる(カリウムが溶け出しているため)
- 毎日同じトッピングではなく、数種類をローテーションする
- トッピングを加えた分、療法食の量を少し減らす(総カロリーを維持)
この方法なら、栄養バランスを崩さず、愛情も伝えられます。
ベースとなる療法食の選び方が「すべて」を決める
ここで最も重要なのが、「ベースとなる療法食の質」です。
いくらトッピングを工夫しても、ベースの療法食がまずければ、愛犬は食べてくれません。逆に、ベースが美味しければ、トッピングなしでも喜んで食べます。
だからこそ、「栄養バランスが完璧で、かつ食いつきが良い療法食」を選ぶことが、ハイブリッド食事療法成功の鍵なのです。
この記事では、食いつき抜群で、栄養バランスが完璧な療法食を、実際の臨床データと飼い主さんの口コミをもとに徹底比較しています。
特に、Yum Yum Yum! 健康マネジメント腎臓は、国産で天然の鰹節の香りが強く、「これなら食べてくれた!」という声が非常に多いフードです。手作りごはんに近い「家庭の味」を追求しているため、トッピングとの相性も抜群です。
ベースが決まれば、あとは10%の愛情を乗せるだけ。これが、最も安全で、最も愛犬が喜ぶ方法です。
忙しい飼い主さんへ:手作りを超える「安心」の選択肢
ここまで読んで、こう思った方もいるかもしれません。
「毎日手作りする時間が、正直取れない…」
「でも、市販のフードだけだと愛情が足りない気がして罪悪感がある…」
その気持ち、本当によく分かります。
でも、ここで一つ質問させてください。
「作る時間」と「一緒に遊ぶ時間」、どちらが愛犬にとって幸せでしょうか?
「作る時間」を「愛犬と遊ぶ時間」に変えませんか?
キッチンで1時間かけてごはんを作る。その時間、愛犬はあなたの帰りを待っています。
一方、質の高い療法食を選べば、食事の準備は5分で終わります。残りの55分を、愛犬と散歩したり、撫でたり、一緒に遊ぶ時間に使えます。
どちらが、愛犬にとって幸せでしょうか?
私は何度も、飼い主さんにこう言われました。「手作りをやめて、遊ぶ時間を増やしたら、うちの子の表情が明るくなりました」と。
犬は、「何を食べたか」よりも、「誰と、どんな時間を過ごしたか」を覚えています。
「Yum Yum Yum! 健康マネジメント腎臓」が、手作りに近い理由
もしあなたが「市販のフードは冷たい感じがして嫌だ」と思っているなら、Yum Yum Yum!を一度試してみてください。
このフードは、
- 国産の新鮮な食材を使用(鶏肉、野菜、穀物)
- 人間も食べられるレベルの品質(ヒューマングレード)
- 天然の鰹節の香りが強く、食欲をそそる
- リン・タンパク質が適切に調整されている
実際、私の患者さんの中には「これなら手作りと変わらない安心感がある」と言ってくださる方もいます。
形は手作りでなくても、あなたの愛情は100%伝わっています。
私の診察室での実話:手作りをやめて、愛犬との時間が増えた飼い主さんの話
ここで、私が担当したゴールデンレトリバーのレオくん(仮名)の飼い主さんのお話をさせてください。
レオくんは11歳で腎臓病(ステージ2)と診断されました。飼い主さんは、それから毎日2時間かけて手作りごはんを作っていました。
しかし、3ヶ月後、飼い主さんは疲れ果てていました。「仕事から帰って、買い物して、夜中まで調理して…。レオと遊ぶ時間がなくなって、レオが寂しそうなんです」
私は提案しました。「手作りをやめて、療法食にしませんか? その分、レオくんと遊ぶ時間を増やしてください」
最初、飼い主さんは抵抗しました。「でも、私が作らないと愛情が足りない気がして…」
私は言いました。「レオくんは、あなたの作ったごはんより、あなたと一緒にいる時間の方が何倍も嬉しいと思いますよ」
飼い主さんは、療法食に切り替えました。そして、毎日30分、レオくんと散歩に行く時間を作りました。
1ヶ月後、飼い主さんは笑顔でこう言いました。「レオが明らかに元気になりました。散歩から帰ると、尻尾を振って喜んでいます。数値も安定しています。私も、以前より幸せです」
これが、私が伝えたいことの全てです。
【お知らせ】もう、愛犬の「数値」に怯える毎日を終わりにしませんか?
腎臓病ケアで最も大切なのは、病院では教えてくれない「自宅での具体的なアクション」です。
ブログでは書ききれなかった「ステージ別の魔法のトッピング分量表(計算不要)」や、「10年以上の臨床経験で培った数値管理術」を1冊のバイブルにまとめました。
私が診察室で30分かけてお話ししている内容のすべてを凝縮しています。
まとめ:形は手作りでなくても、あなたの愛情は愛犬に100%伝わっています
ここまで長い文章をお読みいただき、本当にありがとうございます。
最後に、獣医師として、そして一人の犬好きとして、あなたにお伝えしたいことがあります。
「手作り」という形にこだわる必要はありません。
大切なのは、愛犬の健康を守りながら、一緒に幸せな時間を過ごすことです。
腎臓病の手作りごはんは、確かに理想的に見えます。でも、その理想を追いかけるあまり、あなたが疲れ果て、愛犬との時間が減ってしまったら、本末転倒です。
質の高い療法食を選び、少しのトッピングで愛情を添え、残った時間を愛犬と過ごす。これが、私が10年間の臨床経験から導き出した、最も現実的で、最も幸せな答えです。
あなたの愛情は、「何を食べさせるか」ではなく、「どう接するか」で伝わります。
今日、愛犬を撫でてあげてください。散歩に連れて行ってあげてください。膝の上で一緒に過ごしてあげてください。
それが、最高の愛情表現です。
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👉 腎臓病の愛犬におやつをあげたい──罪悪感に苦しむあなたへ、獣医師が教える「食べていいもの」完全ガイド
療法食をベースに、安全なトッピングやおやつを加える方法を詳しく解説しています。
📚 参考文献・出典(獣医師監修)
本記事は、以下の国際的な腎臓病ガイドラインおよび研究論文に基づき執筆されています。
-
International Renal Interest Society (IRIS)
IRIS Staging of CKD in Dogs and Cats(IRIS CKD Staging System)
※犬の慢性腎臓病の診断、ステージ分類(クレアチニン・SDMAによるステージ1〜4)、高血圧・蛋白尿によるサブステージング、およびステージ別の治療戦略の根拠として引用しています。[1] -
IRIS Board / Today’s Veterinary Practice
Staging of CKD based on blood creatinine and SDMA concentrations (modified 2019)
※SDMAがクレアチニンより早期に腎機能低下を検出しうること、SDMA値とクレアチニン値の乖離時に「より重いステージ」で扱うべきという具体的なステージング・再評価の解説部分を裏付けています。[2] -
IRIS
IRIS Staging of CKD in Dogs and Cats – 2023 update
※2023年改訂における犬のCKDステージ別クレアチニン・SDMAカットオフ(例:SDMA >18 μg/dL でステージ2として扱うなど)に関する最新の基準を参照し、「SDMAが高いと言われた時の再検査・経過観察」の推奨に反映しています。[3] -
Pedrinelli V. et al.
Nutritional and laboratory parameters affect the survival of dogs with chronic kidney disease
※腎臓病用療法食(リン・タンパク制限など)を摂取した犬では、維持食と比べて尿毒症クライシス発症までの期間および生存期間が延長した、というエビデンスとして「腎臓病の犬の療法食・栄養管理が予後を改善しうる」という記述を裏付けています。[4] -
ACVN / Today’s Veterinary Practice
Nutritional Management of Chronic Kidney Disease
※CKDにおけるリン・タンパク質・オメガ3脂肪酸など「腎臓病の犬の手作りご飯とリン制限」に関連する栄養学的要点、およびタンパク制限食が糸球体構造障害や生存期間に与える影響についての説明部分の根拠としています。[5] -
American College of Veterinary Internal Medicine (ACVIM)
ACVIM consensus statement: Guidelines for the identification, evaluation, and management of systemic hypertension in dogs and cats (2018)
※CKDに合併する高血圧の診断基準、血圧測定方法、リスク分類、降圧薬開始のタイミングなど、「腎臓病と高血圧管理」「ステージ4の余命と緩和ケア」における血圧コントロールに関する記述を支える根拠としています。[6] -
Lees G. et al. / ACVIM
2004 ACVIM Forum Consensus Statement: Assessment and Management of Proteinuria in Dogs and Cats
※持続性蛋白尿がCKD犬の予後不良因子であること、UPC値に基づくACE阻害薬などの治療開始基準など、「蛋白尿の評価と治療」「尿検査の重要性」を解説する部分の科学的根拠としています。[7] -
日本獣医腎泌尿器学会誌
Hypertension and proteinuria in dogs and cats with chronic kidney disease
※日本語圏の臨床現場に即したCKD犬の高血圧・蛋白尿管理に関する知見として、降圧療法が蛋白尿を軽減しうることや、その限界に関する解説を補強する目的で引用しています。[8]




