「シュウ酸カルシウム結石です。残念ながら溶けないので、手術が必要です」
獣医師からそう告げられた瞬間のこと、覚えていますか?目の前が真っ暗になって、頭が真っ白になったのではないでしょうか。
あるいは、手術でせっかく取り除いたはずなのに、「また石ができています」と言われて、絶望感に襲われている方もいるかもしれません。
臨床経験10年以上、数百頭の結石症例を診てきた獣医師として、正直に言います。
シュウ酸カルシウム結石は、確かに溶けません。これは化学的な事実です。
でも――ここからが大事なのですが――「溶けない」ことと「諦める」ことは、まったく別の話です。
私はこれまで、適切な食事管理で5年、10年と再発を防いでいる子たちを数多く見てきました。逆に、手術を3回も繰り返してしまった子も見てきました。
その違いは何か? それは「手術後の食事管理」にすべてがかかっているのです。
この記事では、シュウ酸カルシウム結石がなぜ溶けないのか、なぜ再発しやすいのか、そして「二度と手術台に乗せない」ための徹底的な食事戦略を、獣医師の視点から解説します。
溶けないという現実を受け入れた上で、「これ以上大きくしない」「新しく作らせない」という新たな目標に向かって、一緒に歩んでいきましょう。
この記事の著者・監修者:Dr.サク(臨床10年以上)
現役の獣医師、都内動物病院に勤務。腎臓病を中心に、食事療法で数多くの犬の健康寿命を延ばしてきた実績を持つ。専門的な医学的知見に基づき、愛犬に本当に必要なフードを厳選しています。
なぜシュウ酸カルシウムは「溶けない」し「再発する」のか
まず、敵を知ることから始めましょう。
化学的に「不溶性」という残酷な事実
ストルバイト結石が食事で溶けるのに対し、シュウ酸カルシウム結石は化学的に不溶性です。
どんなに尿のpHを変えても、どんな薬を使っても、一度形成されたシュウ酸カルシウムの結晶を溶かすことはできません。これは自然の法則であり、現代医学でも覆せない事実です。
だから、ある程度の大きさになった石は、手術やレーザーで物理的に取り除くしか方法がないのです。
「酸性尿」が引き金を引く皮肉
さらに厄介なのは、シュウ酸カルシウム結石は尿が酸性に傾いたときに形成されやすいという特徴です。
これは何を意味するか?
実は、ストルバイト結石の予防や治療で使われる「尿を酸性化させる療法食」を長期間食べ続けると、今度はシュウ酸カルシウム結石のリスクが高まってしまうのです。
私のクリニックでも、こんなケースがありました。
ミニチュア・シュナウザーの男の子、6歳。ストルバイト結石で療法食を2年間続けていたところ、定期検診でシュウ酸カルシウム結石が見つかったのです。
「ちゃんと先生の言う通りにしてたのに…」と飼い主さんは涙ぐんでいました。
これはその方が悪いのではありません。pH管理の難しさがそこにあるのです。
再発率50%以上という厳しい現実
さらに追い打ちをかけるようで申し訳ないのですが、データもお伝えしなければなりません。
シュウ酸カルシウム結石の手術後の再発率は、3年以内で50%以上という研究結果があります。つまり、手術をした子の半数以上が、3年以内にまた石ができてしまうのです。
なぜこれほど再発率が高いのか?
答えは単純です。「石を作りやすい体質」が変わっていないからです。
- カルシウムの代謝異常
- シュウ酸の過剰吸収
- 尿の濃縮(水分不足)
- 遺伝的な素因
これらの根本原因が解決されないまま、ただ石を取り除いただけでは、体はまた石を作り始めます。
3回の手術を繰り返した柴犬の悲劇
忘れられない症例があります。
柴犬の男の子、8歳。初回の手術から2年の間に、計3回もシュウ酸カルシウム結石の手術を繰り返しました。
3回目の手術後、飼い主さんは疲れ果てた表情で言いました。「もう、この子に麻酔をかけたくないんです。でも、どうしたらいいのか…」
詳しく食生活を聞いてみると、手術後も特に食事を変えず、市販の一般食に煮干しをトッピングし、おやつにチーズやさつまいもを与えていました。
全部、シュウ酸カルシウム結石を作りやすい食材だったのです。
その後、徹底的な食事管理を行った結果、その子は2年以上再発していません。飼い主さんからは「もっと早く知りたかった」と言われました。
この経験から学んだことは、「手術はゴールではなく、予防のスタート」だということです。
【獣医師監修】シュウ酸Caを再発させない「食事の鉄則」
では、具体的にどんな食事管理が必要なのか。臨床経験から得た「再発させない鉄則」をお伝えします。
鉄則1:水分補給が「命」である理由
あらゆる結石予防の中で、最も重要なのが水分摂取です。
なぜなら、尿を薄めることで結晶が形成されにくくなるからです。シュウ酸もカルシウムも、濃度が低ければ結合しにくいのです。
具体的な目安:
- 体重1kgあたり50〜60mlの水分摂取
- 例:5kgの犬なら250〜300ml/日
水を飲ませる工夫:
- フードをふやかす(ドライフードに水やぬるま湯を加える)
- 複数の場所に新鮮な水を用意
- ウェットフードを活用(水分含有量が多い)
- 水に少量のチキンスープ(無塩)を混ぜる
- 自動給水器を使う(流れる水を好む子もいる)
私が「水飲み対策」を徹底的に指導した子たちの再発率は、明らかに低いです。地味ですが、最も効果的な予防策なのです。
鉄則2:NG食材リスト――「絶対に避けるべきもの」
シュウ酸カルシウム結石の予防では、シュウ酸が多い食材とカルシウムが多い食材の両方に注意が必要です。
【シュウ酸が多いNG食材】
- ほうれん草(最も危険!シュウ酸の宝庫)
- さつまいも(意外と知られていないが、かなり多い)
- ナッツ類(アーモンド、ピーナッツなど)
- チョコレート(そもそも犬には毒だが、シュウ酸も多い)
- 紅茶
- キャベツ(少量なら問題ないが、大量摂取は避ける)
【カルシウムが多いNG食材】
- 煮干し(カルシウムの塊)
- チーズ(乳製品全般)
- 小魚類(しらす、いわしなど)
- 骨(骨付き肉やガムなど)
よく「野菜は健康に良い」と思って、ほうれん草やさつまいもを毎日あげている飼い主さんがいますが、シュウ酸カルシウム結石の子には完全NGです。
鉄則3:「納豆」「ヨーグルト」は本当に大丈夫?
飼い主さんからよく聞かれる質問があります。
「納豆やヨーグルトは健康に良いって聞きますが、あげてもいいですか?」
獣医師としての本音を言います。シュウ酸カルシウム結石の子には、推奨しません。
理由を説明しましょう。
【納豆について】
納豆にはシュウ酸が含まれています。量としては極端に多いわけではありませんが、毎日継続的に与えるとリスクになります。
また、納豆にはカルシウムも含まれているため、シュウ酸とカルシウムの両方を摂取してしまうことになります。
【ヨーグルトについて】
ヨーグルトは乳製品なので、カルシウムが豊富です。腸内環境には良いかもしれませんが、結石予防の観点からはリスク要因になります。
もし腸内環境を整えたいなら、カルシウムが少ないプロバイオティクスサプリメントを選ぶ方が安全です。
原則として、「健康に良い」と言われる食材でも、結石予防の観点からは避けるべきものがたくさんあるということを覚えておいてください。
どんなフードを選ぶべきか?pHコントロールの難しさ
ここからが、最も難しい話になります。
「酸性化フード」のジレンマ
ストルバイト結石の予防・治療には「尿を酸性化させるフード」が使われます。ロイヤルカナンのS/Oやヒルズのc/dなどがそうです。
でも、シュウ酸カルシウム結石は酸性尿で形成されやすいのです。
つまり、ストルバイト対策のフードを食べ続けると、シュウ酸カルシウムのリスクが高まるという矛盾が生じます。
実際、私のクリニックでも、ストルバイト予防食を2〜3年続けている子が、シュウ酸カルシウム結石を発症するケースを何度も見てきました。
「中性付近」を保つことの至難の業
理想的なのは、尿pHを6.5〜7.0程度の「中性付近」に保つことです。
これなら、ストルバイト(アルカリ性で形成)もシュウ酸カルシウム(酸性で形成)も、両方のリスクを下げられます。
でも、これが非常に難しいのです。
一般的なドッグフードは、pHコントロールまで考えて作られていません。結石対応食は、どちらか一方(ストルバイトかシュウ酸カルシウム)に特化しているものがほとんどです。
「両方の結石を予防できる、バランスの取れたフード」――これを探すのが、飼い主さんと獣医師の共通の悩みなのです。
シュナウザー特有の問題:脂質代謝
もう一つ、重要なポイントがあります。
シュウ酸カルシウム結石は、ミニチュア・シュナウザー、シーズー、ヨークシャーテリアなどの小型犬に多発します。
特にシュナウザーは、脂質代謝異常(高脂血症)を起こしやすい犬種として知られています。高脂血症は、結石形成にも関与していると考えられています。
つまり、シュナウザーなどの好発犬種では、結石予防と脂質管理の両方を考えたフード選びが必要になるのです。
※シュウ酸カルシウムは体質や遺伝も関係しますが、日々の「水分補給」や「おやつ選び」でリスクは大幅に下げられます。
結石を作らせないための生活習慣や、血尿が出た時の緊急サインについては、以下のまとめ記事を参考にしてください。
⬇️ [犬の尿石症完全ガイド|再発を防ぐ生活習慣と食事]
【解決策】難しいpH調整を任せられる「和漢みらい」という選択
ここまで読んで、「じゃあ、いったいどのフードを選べばいいの?」と途方に暮れている方も多いでしょう。
獣医師として、私が臨床現場で実際に推奨している解決策をご紹介します。
それが「和漢みらいのドッグフード(結石用)」です。
なぜ「和漢みらい」がシュウ酸カルシウム対策に最適なのか
従来の療法食が「pH強制コントロール」というアプローチなのに対し、和漢みらいは「pH自然調整」という発想で作られています。
具体的には:
1. 酸性にもアルカリ性にも傾きすぎない絶妙なバランス
配合されている生薬(ウラジロガシ、カキドオシ、クコの実など)が、尿路の健康を自然にサポートし、尿pHを6.5〜7.0の理想的な中性付近に保つよう設計されています。
これにより、ストルバイトとシュウ酸カルシウム、両方の結石リスクを同時に下げることができるのです。
2. 低脂質設計で、シュナウザーの脂質代謝もケア
主原料に鹿肉を使用し、低脂質(7%程度)を実現。シュウ酸カルシウム結石の好発犬種であるシュナウザー特有の高脂血症リスクにも対応しています。
結石予防と脂質管理、二つの課題を一つのフードで解決できるのです。
3. ミネラルバランスの最適化
シュウ酸カルシウム形成に関わるカルシウム、リン、マグネシウムのバランスを緻密に調整。過不足なく、適正量を維持しています。
4. 長期給与を前提とした栄養設計
療法食の中には「短期使用」を前提としたものもありますが、和漢みらいは「一生涯の維持食」として設計されています。
結石予防だけでなく、免疫力サポート、抗酸化作用、腸内環境改善など、総合的な健康維持を考えた栄養バランスです。
食事を変えて再発が止まった成功例
ここで、希望を持ってもらえる実例をご紹介します。
ミニチュア・シュナウザーの男の子、7歳。2回のシュウ酸カルシウム結石手術を経験し、3回目の再発が確認された子でした。
飼い主さんは「もう手術はさせたくない」と涙を流していました。
そこで、徹底的な食事管理を提案しました:
- 和漢みらい(結石用)に完全切り替え
- 水分摂取量を1日300ml以上に増やす(フードのふやかし、ウェットフード併用)
- おやつは結石対応のもののみ、1日10g以内
- NG食材の完全除去
その結果、石は大きくならず、新しい石もできず、2年半が経過した今も再発していません。
飼い主さんからは「フードを変えただけで、こんなに変わるなんて」と驚かれました。
もちろん、これは「和漢みらいだけ」の効果ではありません。水分管理や食事制限の徹底も重要でした。
でも、「pH調整という最も難しい部分を任せられるフード」があることは、飼い主さんにとって大きな安心材料になったのです。
その他の再発予防策:生活習慣の見直し
フード以外にも、日常生活で気をつけるべきポイントがあります。
定期的な尿検査とエコー検査
手術後は、最低でも3〜6ヶ月ごとの定期検診が必須です。
小さな結晶や初期の石は、レントゲンでは写りません。エコー検査と尿検査の組み合わせで、早期発見することが大切です。
早期に見つかれば、フードの微調整や水分管理の強化で対応できることもあります。
適度な運動で尿の停滞を防ぐ
運動不足になると、尿が膀胱に長時間停滞し、結晶が形成されやすくなります。
毎日の散歩で排尿の機会を増やし、尿の停滞を防ぎましょう。
ストレス管理も実は重要
ストレスは体の代謝バランスを崩し、結石形成に影響を与えることがあります。
安心できる環境、規則正しい生活リズム、十分な睡眠――これらも、総合的な健康管理の一部です。
まとめ:手術はゴールではなく、予防のスタートです
シュウ酸カルシウム結石は確かに「溶けない」石です。この事実は変えられません。
でも、「溶けない」ことは「諦める理由」ではありません。
むしろ、「これ以上大きくしない」「新しく作らせない」という明確な目標を持って、徹底的に予防に取り組むべきなのです。
手術は、石を取り除くことはできます。でも、石を作りやすい体質を変えることはできません。
体質を変えるのは、日々の食事です。水分管理です。生活習慣です。
今日からの食事が、1年後、2年後の愛犬を作ります。
「もう二度と、痛い思いをさせたくない」――その気持ちがあるなら、今日からフードを変えてください。水飲みを工夫してください。NG食材を徹底的に排除してください。
シュウ酸カルシウム結石と診断されたこと、手術をしたことは、確かに辛い経験だったでしょう。
でも、これは「愛犬の食生活を根本から見直すチャンス」でもあります。
適切な食事管理で、手術を繰り返さない未来を作ることは可能です。私は臨床現場で、それを何度も見てきました。
あなたと愛犬が、結石の不安から解放され、穏やかな毎日を取り戻せることを、獣医師として心から願っています。
手術台に二度と乗せないために、今日から始めましょう。


