犬が腎臓病で水を飲まない!脱水を防ぐ「魔法の37度」と飲水量計算式を獣医師が伝授

犬が腎臓病で水を飲まない!脱水を防ぐ「魔法の37度」と飲水量計算式を獣医師が伝授 犬の腎臓病

「また今日も水をほとんど飲んでいない…」

愛犬の水入れを見るたび、心臓がぎゅっと締め付けられる思いをしていませんか。腎臓病と診断されてから、水分補給の重要性は獣医師から何度も聞いている。でも、当の本人は水に見向きもしない。このままでは体内の毒素が排泄されず、症状が悪化してしまう。そんな不安と焦りを抱えている飼い主さんに向けて、臨床経験10年以上の現役獣医師である私が、実践的な対策をお伝えします。

※本記事をお読みになられる前に、愛犬のステージや病気の全体像を正しく理解しておくことも大切です。

⬇️ 【獣医師監修】犬の腎臓病の初期症状・ステージ別余命・最新治療の完全ガイド]

この記事の著者・監修者:Dr.サク(臨床10年以上)
現役の獣医師、都内動物病院に勤務。腎臓病を中心に、食事療法で数多くの犬の健康寿命を延ばしてきた実績を持つ。専門的な医学的知見に基づき、愛犬に本当に必要なフードを厳選しています。

なぜ腎臓病の犬に水分補給が死活問題なのか

腎臓は体内の「洗浄装置」です。血液中の老廃物や毒素をろ過し、尿として体外に排出する役割を担っています。

しかし腎臓病になると、このろ過機能が低下します。通常なら排泄されるはずの尿毒症物質が体内に蓄積し、食欲不振、嘔吐、倦怠感などの症状を引き起こします。

ここで重要になるのが水分です。十分な水分摂取によって、低下した腎機能でも少しでも多くの老廃物を「洗い流す」ことができるのです。水は薬ではありませんが、腎臓病においては最も基本的な治療の一部といえます。

1日に必要な水分量の目安

犬の1日あたりの必要水分量は、一般的に以下の計算式で求められます。

犬の体重必要水分量(目安)実際の量
3kg150~180mlコップ約1杯
5kg250~300mlコップ約1.5杯
10kg500~600mlペットボトル1本分
20kg1,000~1,200mlペットボトル2本分

計算式:体重(kg)× 50~60ml

ただし腎臓病の犬は、この基準量よりもさらに多くの水分が必要です。多飲多尿の症状がある場合、失われた水分を補うため、1.5倍から2倍の水分摂取が推奨されることもあります。

自宅でできる脱水チェック法【ツルゴールテスト】

愛犬が十分に水を飲めているか心配な時、動物病院に行く前に自宅で簡単にチェックできる方法があります。それが「皮膚の弾力テスト(ツルゴールテスト)」です。

実施方法

  1. 愛犬の首の後ろから肩甲骨の間あたりの皮膚をつまむ
  2. 優しく持ち上げて、そっと離す
  3. 皮膚が元の位置に戻る速度を観察する

判定基準

  • 正常:すぐに(1秒以内)元に戻る → 水分状態は良好
  • 軽度脱水:2~3秒かけてゆっくり戻る → 水分補給を強化
  • 中等度以上の脱水:3秒以上かかる、またはテント状に残る → すぐに動物病院へ

注意点

高齢犬や痩せている犬は皮膚の弾力が低下しているため、このテストだけでは判断が難しい場合があります。その他のサインとして、歯茎の乾燥、目のくぼみ、元気消失なども併せて観察しましょう。

腎臓病の犬が水を飲まない5つの理由

なぜ水分が必要なのに、犬は飲んでくれないのでしょうか。その理由を理解することが、対策の第一歩です。

理由1:気持ち悪さ(尿毒症による悪心)
腎臓病が進行すると、体内に蓄積した毒素が吐き気を引き起こします。人間でも気持ち悪い時は水を飲みたくなくなりますよね。犬も同じです。

理由2:口腔内の不快感
尿毒症による口内炎や歯肉炎で、口の中が痛い可能性があります。水を飲む動作そのものが苦痛になっているケースもあります。

理由3:水の味や温度が気に入らない
犬は人間よりも味覚は劣りますが、水の鮮度や温度には敏感です。古い水や冷たすぎる水を嫌がることがあります。

理由4:飲む気力がない
腎臓病の進行により全身状態が悪化すると、水を飲みに行く気力さえなくなります。特に高齢犬では顕著です。

理由5:水入れの位置や形状の問題
首を曲げる姿勢が辛い、器が滑る、水面が見えにくいなど、物理的な問題で飲みにくいこともあります。

水を飲みたくなる環境作り【実践5選】

ここからは、私が診療の中で飼い主さんにお伝えし、実際に効果があった具体的な工夫をご紹介します。

工夫1:水の温度を体温に近づける(37~40℃)

冷たい水は胃腸に負担をかけ、体調不良の犬はさらに飲みたがりません。逆にぬるま湯にすることで、嗜好性が高まります。

電気ケトルで沸かした湯を冷ますか、水に少量の湯を足して人肌程度(手首につけてほんのり温かい程度)にします。冬場は特に効果的で、この方法だけで飲水量が2倍になったケースもあります。

工夫2:器の素材と設置場所を見直す

水入れの素材や場所を変えるだけで、飲水量が劇的に改善することがあります。

器の素材選び

  • ステンレス製:衛生的で臭いがつきにくい、ただし金属臭を嫌がる犬もいる
  • 陶器製:重みがあり安定、冷たさが残りにくく腎臓病の犬に最適
  • プラスチック製:軽くて扱いやすいが、傷に雑菌が繁殖しやすい

設置場所のポイント
犬が頻繁に通る場所、お気に入りの場所に複数設置します。リビング、廊下、寝床の近くなど最低3箇所に置くことで、移動の負担を減らし、目に入る機会を増やせます。階段の上り下りが辛い高齢犬には、各階に設置してください。滑り止めマットの上に置き、直射日光が当たらない場所を選ぶことも大切です。

工夫3:昆布やしいたけの出汁を活用する

無塩の出汁で風味をつけると、驚くほど飲んでくれることがあります。ただし、犬の体調によっては制限が必要な成分もあるため、必ず獣医師に相談してから実施してください。

作り方

  1. 昆布一片(5cm角程度)または干ししいたけ1個を水500mlに入れる
  2. 冷蔵庫で一晩置く(火を使わず、水出しで)
  3. 昆布やしいたけを取り出し、常温または人肌に温める
  4. 最初は通常の水に少量混ぜ、徐々に濃度を上げる

リンやカリウムの制限がある犬には使用できない場合があるため、必ず獣医師の許可を得てください。出汁水は1日で使い切り、新鮮なものと交換することも忘れずに。

工夫4:ウェットフードで水分摂取

直接水を飲まなくても、食事から水分を摂取する方法です。ウェットフードは約70~80%が水分なので、腎臓病の犬には非常に有効です。

療法食のウェットタイプ(腎臓サポート用)を選び、ドライフードをふやかして与えるのも効果的です。ふやかし水も一緒に与えることで、さらに水分摂取量が増えます。100gのウェットフードで約70~80mlの水分摂取が可能なので、5kgの犬なら、ウェットフード300gで必要量の大半をカバーできます。

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また「療法食を全く食べてくれない」という悩みは非常に深刻です。診察室で指導している、食欲を復活させる裏技はこちらにまとめています。

工夫5:循環式給水器の導入

流れる水は犬の興味を引き、飲水量が増えることが多くあります。常に新鮮な水を提供できるメリットもあります。

選び方のポイントは、静音性の高いもの(犬が怖がらない)、フィルター交換が簡単なもの、容量が十分にあるもの(1.5L以上)、掃除がしやすい構造です。

飲水量を正確に管理するためのツール

水分補給の工夫をしても、実際にどれだけ飲んでいるのか把握できなければ、効果を判定できません。

メモリ付き給水ボウル

透明な側面に目盛りが付いた給水器を使えば、1日の飲水量を簡単に記録できます。朝に満タンにして、夜にどれだけ減ったかを確認するだけです。

複数箇所に水入れを置く場合は、それぞれにメモリ付きのものを使うか、1箇所だけメモリ付きにして主要な給水場所とします。

計量カップでの記録

メモリ付きボウルがない場合は、水を入れる時に計量カップで測る習慣をつけましょう。朝に新しい水を入れた量を記録し、夜に残った水を計量カップに戻して測定します。入れた量から残った量を引けば、飲んだ量がわかります。

おすすめの水分管理アイテム

ここまでの工夫を実践するために、実際に私の病院でも飼い主さんにおすすめしているアイテムをご紹介します。

循環式給水器

流れる水で犬の興味を引き、常に新鮮な水を提供できます。フィルターで不純物も除去されるため、腎臓病の犬にも安心です。自動循環で水が常に動いており、容量が大きく留守中も安心、静音設計で犬を怖がらせないものを選びましょう。

\ 獣医師も推奨 / 流れる水で飲水量UP!フィルター付きで安心

メモリ付き給水ボウル

飲水量を正確に把握できる、シンプルで使いやすいボウルです。一目で残量がわかり、滑り止め付きで安定、食洗機対応で衛生的、複数サイズ展開されています。

\ 飲んだ量が一目でわかる / 腎臓病ケアの必需品。メモリ付きで管理が楽に

腎臓サポート用ウェットフード

療法食のウェットタイプで、水分補給と栄養管理を同時に実現します。リンやタンパク質が制限されており、嗜好性が高く食べやすく、水分含有量70%以上で獣医師推奨です。

それでも飲まない時の最終手段

ここまでの工夫をしても水を飲まない場合、以下の医療的介入が必要になります。

皮下点滴
動物病院で行う、皮膚の下に水分を補給する方法です。腎臓病の犬には一般的な治療で、自宅で飼い主さんが行えるようになることもあります。確実に水分補給ができ、週に数回の通院または自宅実施で、犬への負担は比較的少ないです。

食道チューブ・胃チューブ
口から食事や水分を摂取できない場合、チューブを設置して直接胃に届ける方法もあります。ただし、これは末期の選択肢となります。

入院での点滴治療
脱水が重度で、皮下点滴では追いつかない場合は、静脈点滴による入院治療が必要です。

飲水量を1ml単位で管理する重要性

日々の飲水量を記録することで、愛犬の体調変化を早期に察知できます。

飲水量の増減で病状の変化がわかり、獣医師に正確な情報を伝えられます。工夫の効果を数値で確認でき、異変に早く気付けるのです。

私が作成した「飲水量管理シート」では、日付、飲水量、尿の回数と量、食欲、元気度などを一元管理できます。このシートを使うことで、体調の予兆を見逃さず、適切なタイミングで受診判断ができるようになります。

飲水量を1ml単位で管理し、体調を予測する詳細な管理シートは、私のnoteで公開しています。

noteでは以下の内容を詳しく解説しています。

  • 体調予測の読み解き方(飲水量の変動パターンから病状進行を予測)
  • 受診タイミングの判断基準(緊急性の高い症状チェックリスト)
  • 実際の症例と改善事例

➡ [【獣医師監修】愛犬の腎臓病ケア完全攻略マニュアル(note版)の詳細はこちら]

まとめ:小さな工夫の積み重ねが愛犬の命を守る

腎臓病の犬が水を飲まないことは、飼い主さんにとって大きな不安です。しかし、諦める必要はありません。

今日ご紹介した工夫を一つずつ試してみてください。水の温度を体温に近づける(37~40℃)、器の素材と設置場所を見直す、出汁で風味をつける(獣医師に相談の上)、ウェットフードを活用する、循環式給水器を導入する。すべてを一度に実施する必要はありません。愛犬の様子を見ながら、効果のあるものを見つけていきましょう。

そして、飲水量は必ず記録してください。数字で把握することで、見えなかった体調変化が見えてくるはずです。

あなたの愛犬が1mlでも多く水を飲み、少しでも長く穏やかな時間を過ごせることを心から願っています。

飲水量を1ml単位で管理し、体調を予測する詳細な管理シートは、私のnoteにあります。臨床の現場で培った知識と経験を、すべて惜しみなくお伝えしていますので、ぜひご覧ください。


【獣医師 Dr.サクのプロフィール】
臨床経験10年以上の現役獣医師。特に腎臓病、心臓病など慢性疾患の在宅ケアに力を入れ、飼い主さんと二人三脚で愛犬の生活の質を守ることを信念としている。noteでは、より専門的な情報や管理ツールを発信中。​​​​​​​​​​​​​​​​